製薬企業 Study Managerとして働いている中で感じた高めていくべきスキルを自戒をこめて記します。
(勿論、下記は本当に一部のスキルですので、随時、更新していけたらと思っています)
議論力
臨床開発職の成果は数値化できない部分が多く、担当者の貢献度を他者より強く主張することは案外難しかったりします。
ただ、既存の方法を変更し、コスト・スケジュールに大幅な改善をもたらすことができれば、自分の成果として説明しやすいですし、更にその変化が、他プロジェクトにも良い影響を与えれば一層、大きな成果をあげたと主張できると思います。
私は既存の方法(SOPや明記されていないが踏襲されていた過去の事例等)を変えることに積極的に取り組んできた方だと思いますが、その中で、この業界では保守的な考えに帰着しがちなのかもしれないと感じました。
臨床試験ではGCP・SOP等、各種規制・手順が規定されています。
新たな価値創造というより、決められたプラン・手順をきっちり守ることのほうが求められている感覚すらあります。
その結果、他業界と比較して、過去の事例を踏襲する方が賢明といった考え・方針に陥りがちなのかもしれません。
「これまでのやり方で当局から何も指摘を受けていないから」「これまでのやり方を変えるのはリスクがあるから」「新たなやり方が良いかはGCPに明記されていないから」「スケジュールを大幅に早めても他部署のスケジュールとの兼ね合いで申請時期が変わるわけではないから」等、方法を変更しない理由は溢れるように出てきます。
ただ、結果を改善したいのであれば、方法を改善する必要があります。
既存の方法を踏襲したい勢力に納得してもらうため、円滑に議論を進める能力の重要性を痛感しました。
近年、ディベート番組が流行っていますが、相手を打ち負かす議論ではなく、相手に納得してもらうために論理立てて説明し、結果的に自分が進めたい方向に帰着させるようスキルを向上させる必要があるかと思います。
議論の能力は、問題に対する理解の深さとは別軸のスキルだと感じています。最悪なケースは、問題に対する理解と適切な対応方法を有している人が、自信満々で声高らかに主張する人に埋もれてしまい、皆が誤った対応方法をとる結論に落ち着くことです。
議論の能力は実践でしか詰めないため、積極的に会議で発言し議論に参加したり、社会人のワークショップに参加しスキルを高める必要があるかと思います。
また、議論は二人でも難しいですが、複数人で実施する場合が多いです。
複数人集まると各自が言いたいことを述べ収集がつかなくなります。
エントロピー増大の法則によると、放置しておくと何事も無秩序になるといいますので、議論がカオスにならないよう、常に目的の確認や主張の整理等を実施することが重要かと思います。また、いきなり複数人で議論するのではなく、少人数で議論をしてある程度の下地をつくっておくことが必要だと感じました。
英語力の重要性
新卒時代、海外とやり取りをする上司をみて憧れていましたが、憧れなくても海外とのやりとりは、今後ますます増えていきます。
その際、英語を理解できていないと適切な議論が実施できるわけもなく、自分の主張を通すことができなくなります。
そういった意味で、英語のスピーキング力は極めて重要な要素です。
現在は無料でスピーキングの練習ができるアプリ等もありますので、積極的にスピーキングの練習をして、言語の壁を少しでもなくすことができればと思います。
加えて、英語力が向上すると、情報収集の収集源が世界が変わるくらい確実に広がります。
Youtubeである疾患について検索した際、日本語の動画では10分ほどの簡単な動画しかでてこない一方、英語の動画では90分程の大学の講義レベルの動画を見ることができたりします。英語の情報は溢れていて、日本語での情報量と明らかに違いがあります。
ここ数十年、日本が停滞している一因は、IT時代になり情報が民主化された今、英語力がダイレクトに情報収集能力に影響しているからなのでは?と思ってしまうほどです。
(逆に日本語のおかげで他国の進出といった脅威から守られている側面もあるのかもしれません)
いずれにしても、自信をもって会話できるレベルの英語力を身につけられるよう、日々研鑽する必要があります。
マネジメントスキルの重要性
Study Mangagerを経験して、マネジメントスキルの重要性を痛感しました。
自分の担当業務内で成果をだすのではなく、チームとして成果をだせるようになるため明確な方針の提示や適切なオーバーサイト・フィードバックが重要です。
その他多くの要素があるかと思いますが、下記2点について、気づきがありましたので、整理しました。
コミュニケーション
マネジメントは、物理的に距離が遠ざかるほど難しくなる傾向にあると思います。
距離が近ければ当たり前に見えていたことが、距離が遠くなると見えないことも多く発生するからです。
リモート時代の昨今、上長からみて私をマネジメントすることは出社が当たり前だった時代より難しいでしょう。
よって、以前より綿密なコミュニケーションについて意識を向ける必要があると思います。
例えば、出社時の声掛け・リモートでも1 on 1の時間を意識して取ること等に加え、ランチに誘うなどあっても良いと思います。
しかし、意外とコミュニケーションに消極的な方も多いような気がしています。
コミュニケーションは相手の協力なくしては成り立ちませんし、モラハラ・セクハラに厳しい現代で、相手の迷惑にならないよう留意されているのかと思いますが、積極的にコミュニケーションをとらなければいけない中で過度に気を使わないよう留意しなければならないとも思います。
リーダー・チーム員の人柄や関係性等にもよりますので、世間一般で言われていることだけでなく、自分の感覚を信じて、コミュニケーションに意識を向ける必要もあるかと思います。
ただ、大前提、コミュニケーションを円滑に実施するためには、リスペクトされる人間性が求められることには常に心にとめておきたいと思います。
日頃から、真摯に仕事に向き合っているか、横柄な性格になっていないか等、自分の行動を振り返り、仕事力・人間性を向上させていきたいと思います。
チームのアウトプットの最大化のためのサイクル
Study Managerを経験した当初、どの程度の厳しさでチームを運用するか悩みました。
割れた窓ガラス理論は、窓ガラスが一つ割れていることが引き金となり、最終的に街が崩壊する話ですが、治験にも通じるところがあると思います。
それ自体は申請に影響しないほど小さな問題のため、許容することができても、許容することでチームでの規律が悪化する恐れがあります。
背伸びをしてでも、全ての項目で100点をとるよう、チーム員に求めるのか、または優先順位を明確にし、優先順位が高いものは100点を目指し、その他は60点でよいとわりきるのか。
経験を重ねる中で、私は、上記のハイブリッドが必要だという考えに落ち着きました。
最初から全ての項目で100点をとるよう、チーム員にゴリ押しするのは、チーム員が疲弊しアサインアウトすることになりかねませんし、軽微な箇所に時間をかけてしまったがために、重要な箇所にミスが生じた等といったことになりかねません。
かといって、優先順位が低いものは、ミスをしてもよいという雰囲気をつくってしまうと、割れた窓ガラス理論になり優先順位の高い項目にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
ですので、優先順位は明確にし、必ず品質を確保してほしい項目を提示するとともに、チーム員の能力を引き延ばし、その他の項目の品質も上げることができるよう治験期間を通じてトレーニングしていく必要があるかと思います。
つまり、チーム員の現状の能力を把握し、努力すれば達成できる少し高い目標を常に提示し、適切にフィードバックし、更にチーム員の能力を高めるサイクルを回すことがチームとして最も良いアウトプットを産むと思います。
並行して、リーダーは、業務の方法をもっと効率化できないか等、常に改善案を検討し、仕事の生産性を高める仕組みづくりに取り組まなければならないと思います。
まとめ
とりとめもなく記載してきましたが、上記以外にも多くのスキルが必要ですし、私自身不足している能力が多いと痛感しています。
上の立場になる程、自分に素直にFBをしてくれる人は減るため、より自分に厳しくPDCAを回さないといけないと思います。
理想のStudy manager像に近づけるよう、自己研鑽していきたいと思います。